アデニウム・アラビカムの育て方④ 生長段階2(幼苗〜若苗:太くぼってりさせる)

🌱アデニウムアラビカム実生は、発芽〜本葉形成の「生き残りフェーズ」を越えると、ここから先は「太らせる設計」が主役になります。見た目のボリュームは偶然ではなく、光(炭素の供給)根域(酸素と水)栄養(無機イオン)のバランスでかなり再現性を上げられます🔬

実生苗が「小苗」から「塊根が明確に動く」段階に入るところで、低重心を保ちつつ、塊根を太くぼってり育てるための環境設計を整理します🪴

アデニウム・アラビカムの育て方 その他の記事は↓こちらです。

✅今回の焦点肥大を伸ばす根域設計(鉢・用土の物理性・水・酸素・塩類)
🔬科学の軸光合成(炭素収支)× 根の呼吸(酸素拡散)× 水分保持(乾湿の振れ幅)
🌿回避したい形徒長(上に伸びる)と根傷み(低酸素・塩類集積)

「太る」を分解する

まず整理したいのは、アラビカムを「太らせる」ときに増えているのが、単なる水分量だけではない点です💡

アデニウムの基部〜根は、見た目としては「ぷっくり」ですが、植物生理としては大きく2種類の増え方が絡みます。

ひとつは一次成長で、これは茎や葉が伸びる成長です。もうひとつは二次成長で、これは幹・根が径方向に太る成長です。二次成長は維管束形成層(いかんそくけいせいそう:木部と師部を増やす“成長の帯”)の働きで進みます。さらに多肉・塊根では、柔組織(じゅうそしき:水と炭水化物を貯める細胞が多い組織)の体積変化も見た目に効いてきます。

つまり、低重心で塊根を美しく大きくするには、一次成長(伸び)を暴れさせず二次成長と貯蔵(太り)を進める方向に、環境の「入力」を揃える必要があります🌞💧💨

徒長は「光不足」だけで起きない

徒長というと「日照不足」を連想しがちですが、実務では光・温度・窒素・根域酸素が絡みます。特にアデニウムは暖かい環境でよく動くため、光量が追いつかないまま温度だけ上がると、茎の伸長が優先されやすくなります。

徒長対策は「日当たり」だけでなく、根が呼吸できる状態(=酸素が届く状態)を保つことまで含めて設計します🔬

光の設計

塊根を太らせるための燃料は、最終的には光合成で作られる炭素です🌞 しかし光は強ければよい、という単純な話でもありません。強光は光合成能力を引き出しますが、同時に蒸散(葉から水が出る)と根の吸水を引き上げ、根域が酸素不足だと一気に破綻します。

遮光の度合いで「伸び方」が変わる

アデニウム(A. obesum ‘Red’)の生産条件を比較した研究では、遮光率が上がると樹高(キャノピー高)が高くなる傾向が示されています。16週時点で、遮光0%(フルサン相当)が20.3cm、30%が22.1cm、50%が25.2cmでした(McBride, 2012)。

また20週時点のデータでも、遮光0%が18.1cm、30%が20.8cm、50%が24.3cmと、遮光が強いほど背が伸びています(McBride, 2012)。この「伸びる」方向は、アラビカムを低重心に仕立てたい場合にはノイズになりやすいです。

「適度な光」で品質が上がる理由

同研究では、遮光30%条件で視覚的品質(Visual Plant Quality)が高く評価されています(20週で30%遮光が3.6、0%遮光が3.1、50%遮光が3.1)(McBride, 2012)。ここで重要なのは、品質評価が「サイズが大きい」だけで決まらない点です。強光のストレスが緩むことで葉が整い、バランスが良くなるケースがあります。

したがって実務としては、強すぎる遮光(例:50%相当)を常態化させない一方で、環境(真夏の直射・高温)次第では軽い遮光で“光合成が止まらない範囲”を維持する、という設計が合理的です🌞🧪

光を「指標」で捉える(PPFDとDLI)

光を「感覚」から「指標」に寄せるために、ここでは2つだけ用語を導入します。

PPFD(光合成有効光量子束密度:葉が1秒あたりに受ける光の量)は“瞬間の明るさ”です。DLI(日積算光量:1日のPPFDの合計)は“その日の光の貯金”です。

アラビカムを太らせたいなら、DLIが不足する状況(屋内の窓辺・弱光)では、どうしても伸びが先行しやすくなります。反対に、光を上げるほど根域条件(酸素と水)が厳しくなるため、次の「根域設計」が必須になります💨

根域の酸素

塊根植物の実生を太らせるとき、上部の光や温度よりも先に“上限”を作りやすいのが根域の酸素です。ここが詰まると、光が強くても肥大が伸びません。

空気が入る隙間(空気充填孔隙率)

空気充填孔隙率(くうきじゅうてんこうげきりつ:潅水して排水が落ち着いた後に、用土の隙間のうち空気で満たされる割合)は、根が呼吸できる余白の指標です💨

酸素拡散と用土物理性を扱った報告では、経験則として空気充填孔隙率25〜30%が最適な酸素拡散を与えると述べられ、実測の総括としても少なくとも20〜35%で最適な酸素拡散が起きる、という結論が示されています(Verhagen, 2013)。

一方で、コンテナ培土の一般論としては、空気充填孔隙率は少なくとも10%、そして多くの場合25%を超えない範囲が推奨される、という整理もあります(UC ANR, 2019)。

この2つは矛盾ではなく、作物・生育段階・灌水設計で最適が動くということです。アラビカム実生を「太らせる」局面では、光と温度を上げるほど根の呼吸需要が上がるため、現実的には“高めの空気側”に寄せた設計が安定しやすいです🔬

低酸素が引き起こすのは「根腐れ」だけではない

根域が低酸素になると根の代謝が落ち、吸水・吸肥の効率が下がります。その結果、葉は水を使えずにしおれたように見えるのに、鉢の中は湿っている、という「見かけの乾き」が起きやすくなります。さらに低酸素の土壌では還元状態が進み、植物に有害な形の化学種が増えることがあり、例えばマンガンの過剰などが葉のクロロシス(黄化)につながる可能性が示されています(UC ANR, 2019)。

太らせる段階で重要なのは、根が呼吸できる“余白”を残したまま水を使うという発想です💧💨

鉢サイズで水と酸素の比率が変わる

同じ用土でも、鉢のサイズ・高さが変わると、鉢内の空気:水:固相の比率は変わります🪴 ここが理解できると、「浅い鉢は乾くから安心」「大きい鉢は太るから正解」といった単純化を避けられます。

コンテナ容量と滞水層

コンテナ容量(container capacity:十分に潅水し排水が終わった後に、鉢の中に保持される水分量)は、鉢栽培の水管理の土台です。根域物理性のレビューでは、15cm高の鉢における理想的な培地として、全体の孔隙が85%あり、その孔隙が排水後に空気30%・水70%で占められる、という整理が引用されています(De Boodt and Verdonck, 1972; Argo, 1998)。

さらに重要なのが、排水後も鉢底に水が残る滞水層(perched water table:鉢底にできる飽和帯)です。これは「穴があるのに水が残る」現象で、鉢の高さが低いほど鉢全体に占める割合が大きくなります(Argo, 1998)。

背を低く見せたいときほど、根域は苦しくなる

アラビカムは低重心が美しいため、意匠として浅鉢に行きたくなります。しかし浅鉢は滞水層の比率が上がりやすく、用土が細かいと空気充填孔隙率が一気に落ちます。結果として、肥大を狙って水を入れるほど、根が呼吸できず、成長が止まりやすくなります💧⚠️

この矛盾を解く鍵は「灌水設計」にあります。浅鉢を使うほど、“排水後に空気が残る用土”“鉢内の水分状態を読み取る手法”が必要になります。

鉢を大きくすると太りやすいが、別の難しさも出る

アデニウム(A. obesum ‘Red’)では、鉢サイズを1.25Lから3.0Lに上げることで、20週時点の茎径(caliper)が2.4cm→3.1cm、地上部乾物重が29.7g→60.4gへ増えています(McBride, 2012)。

これは「根域容積が増えると同化産物(炭素)の受け皿が増え、成長が伸びる」ことを示唆します。ただし同時に、大鉢は乾きムラ鉢内の湿りの持続を生みやすく、上部が乾いて見えても底が湿っている、という状態を作りがちです。容器形状と灌水の組み合わせを間違えると、むしろ根域が低酸素になりやすい点は押さえておきたいところです🌡️💨

「乾かしすぎ」より「酸素がある湿り」

塊根植物の世界では「乾かして締める」がよく語られます。しかし太くぼってりした塊根を狙う局面では、乾燥ストレスが強すぎると光合成が落ち、炭素の供給が止まります。肥大は“材料不足”になります。

灌水強度は、用土とセットで意味が決まる

アデニウムの鉢栽培で、用土と潅水レベル(用土の保水力に対して60〜70%を維持するか、80〜90%を維持するか)を比較した研究では、塊根の太り方が用土×潅水の相互作用で変わっています(Colombo et al., 2018)。

たとえば、バーミキュライト+ココファイバー(V+CF)では、80〜90%の水分保持状態で塊根径の増加が38.40mmと、60〜70%の27.99mmより大きくなりました(Colombo et al., 2018)。一方、砂+ココファイバー(S+CF)では、60〜70%が35.28mm、80〜90%が32.25mmと差が逆方向に出ています(Colombo et al., 2018)。

この結果が示すのは、「乾かす/湿らす」を単独で語るのではなく、その用土が排水後にどれだけ空気を残すかとセットで考える必要がある、ということです🔬💧💨

狙うべきは「酸素が切れない範囲で水を使う」

アラビカムを太らせたい時期は、根がよく動き、吸水と蒸散が回る温度帯で管理することが多いはずです。そのとき、用土が酸素不足に陥ると、光を上げても肥大は伸びません。反対に、排水後に空気が残る設計ができていれば、比較的しっかり水を使っても根が呼吸でき、結果として炭素収支がプラスになり、肥大が伸びやすくなります。

この「酸素が切れない範囲」を、ここから先は鉢増し・粒度・水やり判定へ落とし込みます🪴✅

施肥は肥大の材料だが、塩類集積は避ける

肥大には炭素だけではなく、タンパク質合成や酵素反応に必要な窒素・リン・カリ、そしてマグネシウム(葉緑素の中心元素)などの無機栄養が必要です🧪

施肥量で「太り」も「質」も変わる

アデニウム(A. obesum ‘Red’)の研究では、肥料レート(用土1Lあたり2/4/6/8g)を上げると20週時点の茎径(caliper)が1.9cm(2g/L)→2.2cm(6g/L)へ増え、地上部乾物重も9.4g→23.6gへ増加しています(McBride, 2012)。肥大を狙うなら、極端な低栄養よりも、根が健全に吸える形で栄養を入れるほうが合理的です。

塩類集積の目安

ただし施肥には副作用があります。それが塩類集積(えんるいしゅうせき:肥料成分が鉢内に蓄積して浸透圧ストレスや根傷みを起こす現象)です⚠️

同研究では肥料レートが上がるほど溶解性塩類(soluble salts)が増え、20週時点で約700〜1850 μS/cmが生産上の通常範囲で、良品質の株が得られたのは1500〜2000 μS/cm程度だったと述べられています(McBride, 2012)。また鉢サイズが大きい3.0Lでは溶解性塩類が1556.6 μS/cmと、1.25Lの829.9 μS/cmより高くなっています(McBride, 2012)。

大鉢は太りやすい一方で、塩類が溜まりやすい条件も作るため、ここから先は“肥大を狙いながら塩類を溜めない”運用設計を具体化します💧🧪

属ごとの「太り方」の違い

同じ乾燥地植物でも「太る部位」が違うことを押さえると、アラビカムの設計がブレにくくなります🌍

主な貯蔵器官根域設計の要点
アデニウム基部〜根(塊根)酸素を確保しつつ水を使い、炭素収支を伸ばす(Colombo et al., 2018)
パキポディウム幹(多肉幹)強光・高温で動くほど根域低酸素に注意。用土の空気側が重要(Verhagen, 2013)
アガベ葉(ロゼット)“葉を太らせる”設計になりやすい。過湿で根が止まると形が崩れやすい(UC ANR, 2019)

ここまでで、太くぼってり育てるために必要な「入力の設計図」(光・鉢・酸素・水・塩類)を揃えました。次に、それを実務の手順として組み立てます🪴✅

🪴鉢増しの判断基準

「太る=地上部の見栄え」だけではありません。根が呼吸でき、吸水でき、同化産物(糖)を蓄えられる根域(root zone)の設計が先に決まります。コンテナ栽培では、根域の体積と環境は鉢のサイズ・形状で強く規定されます。

アデニウム属(A. obesum)を用いた栽培試験では、大きい鉢(3.0 L)の方が茎の太さ(caliper)や乾物重が大きくなりやすいことが示されています(McBride, 2012)。この傾向は「鉢を大きくすれば必ず太る」という単純な話ではなく、根域が確保されると、養水分の流量と同化産物の配分が伸びやすいという意味で読み取ると安全です。

観察(現象)根域・水分の解釈次の一手(科学的に筋が良い対応)
灌水しても半日〜1日で極端に乾く根域が詰まり、基質の有効貯水(WRC)が不足している可能性鉢増しで根域体積を増やし、同時に粒度を見直して「空気を残したまま水を持つ」方向へ寄せる
乾きが遅く、底の方がいつまでも重い滞水層が根域の大きな割合を占め、酸素供給が不足している可能性鉢を「浅く」するのではなく、鉢高を確保するか、粗い粒を増やして滞水層そのものを薄くする
地上部は伸びるのに幹・塊根の膨らみが鈍い光・温度・水のどれかがボトルネック、または塩類(EC)ストレスの可能性「水と肥料を増やす」より先に、水分運用を計測化し、ECを測って上げ過ぎを避ける(McBride, 2012)

重要なのは、鉢増しを「イベント」ではなく根域環境の再設計として扱うことです。🌱

📐鉢の高さと滞水層

まず押さえるべきキーワードが、滞水層(perched water table)です。これは灌水後に排水しても鉢底付近に残る飽和層を指し、コンテナでは原理的に発生します(Spomer, 1975; Argo, 1998)。

そして重要なのは、同じ用土なら滞水層の「高さ」自体は大きく変わりにくい一方で、鉢が低いほど根域全体に占める滞水層の割合が増える点です(Argo, 1998; Tjosvold, 2019)。低重心の見た目を狙って浅鉢へ急ぐと、根域が酸素不足に傾きやすくなります。😵‍💫

Argoは、コンテナ内の水分は「均一」ではなく、底が湿り、上が乾く勾配を持つことを具体的に示しています。例として17 cm鉢では、上層ほど水分が低く、底層ほど高い値になり得ます(Argo, 1998)。この勾配があるからこそ、浅鉢では根域の相当部分が「いつも湿った側」に寄りやすいのです。

したがってアラビカム実生の「太らせるフェーズ」では、見た目の完成鉢よりも育成鉢の機能を優先させます。✅ 具体的には、鉢高を確保して根域の空気相(気相)を残すか、用土を粗くして滞水層を薄くします(Argo, 1998; Tjosvold, 2019)。

🪨鉢底石の扱い

「鉢底に砂利を敷けば排水が良くなる」という直感は、層境界で水が移動しにくい現象(テクスチャ差による移動阻害)を見落としがちです。灌水後の余剰水は、下層が粗いほど上層が飽和するまで動きにくいため、目的と逆の状態を招くことがあります(Chalker-Scott, 2000)。

鉢底石は排水性の魔法ではなく、排水孔を塞がない・用土流出を抑えるなどの機能に整理して使う方が、判断がぶれません。🧠

🧱粒度分布と「空気と水」の同時成立

ここでの専門用語を整理します。

毛管孔隙(capillary pore):小さい孔隙で、毛管力により水を保持しやすい領域。
非毛管孔隙(non-capillary pore):大きい孔隙で、排水後に空気が残りやすい領域。

粒径の目安として、Argoは0.3 mm未満が毛管孔隙に寄与し、0.3 mm以上が非毛管孔隙に寄与しやすいと整理しています(Argo, 1998)。また、植物が利用しやすい水(いわゆる植物可給水)は、極端に強く保持された水ではなく、一定範囲の吸引圧で保持される水です(Argo, 1998)。

アラビカム実生を太らせる局面では、「水を増やす」より「空気を確保したまま水を持つ」ことが優先されます。🫧 この思想は、コンテナ用土の一般論として、空気相(air-filled porosity)は少なくとも10%程度、一般には25%を大きく超えない範囲が推奨される、という整理にも整合します(Tjosvold, 2019)。一方で、酸素拡散の観点からは25〜30%が目安として言及されることもあり(Verhagen, 2013)、高温・高光で代謝を回す育成では、空気相を不足させない側へ倒す判断が合理的になります。

さらに、微細粒が増えると、大きい孔隙が微細粒で埋まり、気相が急激に失われることがあります(Argo, 1998)。見た目の「締まり」を優先して微塵が増えると、太らせたい局面では逆効果になりやすい点に注意が必要です。⚠️

⚖️水やりを「感覚」から「計測」へ

太らせるフェーズで最も再現性が上がるのは、灌水を重量(重さ)で管理する方法です。重量は、根域に残る水分量を(多少の誤差はあっても)一貫して反映します。

同様の考え方は研究側でも一般的で、コンテナ苗の灌水管理に重量を使う方法が整理されています(Dumroese et al., 2015)。また、アデニウム(A. obesum)の基質と灌水条件を比較した研究では、基質の水分保持能に対して60〜70%または80〜90%の水分レベルを鉢重量の計測で維持しています(Colombo et al., 2018)。

📏WRC(水分保持能)を重量で運用する

WRC(水分保持能)は、ここでは「十分に潅水して排水が落ち着いた状態(コンテナ容量)で、用土が保持している水の量」を基準にした考え方です(Colombo et al., 2018)。

記号意味家庭での取り方
WCCコンテナ容量の重量(十分潅水→排水後)鉢底から水が切れ、30〜60分後に計測
Wdry乾き側の重量(用土中の水がかなり減った状態)同じ用土を詰めた「空鉢」を乾燥させて基準化すると安全
WRC保持できる水の幅(WCC−Wdry上の2つの差分

目標とする水分レベル(例:WRCの70%)に合わせるなら、次で目標重量が出ます。

目標重量 = Wdry + 0.70 ×(WCC − Wdry

例えば、WCC=500g、Wdry=300gならWRC=200gで、70%運用の目標重量は440gになります。📌 ここまで落とし込むと「表面が乾いたから水」ではなく、「根域の水分がこのラインを切ったから水」へ移行できます。

なお、植物体が成長すると鉢重量は増えるため、重量基準は一定周期で更新します(Dumroese et al., 2015)。この更新が、徒長や根腐れの予防に直結します。🔁

💧60〜70%運用と80〜90%運用の使い分け

Colomboらの結果は「高水分が常に悪い」を否定します。ポイントは用土と酸素です。ココファイバーを含む系では、より高い水分条件(80〜90% WRC)で塊根径の増加が大きくなる組み合わせが示されています(Colombo et al., 2018)。

この読み替えはシンプルで、酸素が切れない設計(粒度・鉢高・空気相)ができているなら、水は成長の燃料になりやすいということです。逆に、空気相が不足している基質では、80〜90%運用は「水のストレス」ではなく酸素ストレスになり、太らせたい局面で破綻します(Tjosvold, 2019; Verhagen, 2013)。

🌵ここは属によっても安全域が違います。例えばアガベは葉に水を保持しやすく、根域の水分を高めに維持しなくても生育が成立しやすい一方、酸素不足には弱い局面があります。パキポディウムユーフォルビアも同様に、乾燥耐性が高いからこそ「水の多寡」より根域の酸素が先に効きます。したがって、アラビカムを太らせるときも、まず酸素が残る設計を作り、その上でWRCの運用を上げ下げする順番が合理的です。🧭

🧂塩類(EC)を味方にする施肥設計

肥料を語るときに避けて通れないのが、EC(Electrical Conductivity:導電率)です。ECは溶けている塩類(イオン)の総量を反映し、肥料濃度の「効き過ぎ/足りなさ」を定量化できます(LeBude & Bilderback, 2009)。

アデニウム(A. obesum)では、流下液(runoff)を導電率計で測定した試験において、可視品質の高い株が得られたときの総塩類がおおむね1000〜1800 µS/cm、また「良品は1500〜2000 µS/cm程度でも生産できる」と整理されています(McBride, 2012)。この値は「アラビカムの正解値」というより、アデニウム属をコンテナで健全に太らせる際の現実的な帯域として使うのが良いでしょう。📊

🧪ECの測り方を統一する(ポアスルー)

ECは測定法で値が変わるため、手順を固定して「トレンド」で判断するのが安全です。根を乱さずに行える方法として、ポアスルー(Pour-through)が普及しています(LeBude & Bilderback, 2009)。手順の要点は、通常潅水でコンテナ容量にした後、30分〜2時間待ってから規定量の水を追加して流下液を集め、ECとpHを測ることです(LeBude & Bilderback, 2009)。

この資料では、多くのナーサリー作物の目安として、活動期の流下液ECが0.5〜2.0 mS/cm(=500〜2000 µS/cm)、pHが5.2〜6.3というガイドも示されています(LeBude & Bilderback, 2009)。一方、アデニウムではpHが6.5〜7.2でも良品が得られたという報告があるため(McBride, 2012)、pHは「一般論」ではなく属・種の実績値に寄せて解釈します。

🚿ECが高いときの基本対応(溶脱率)

塩類が蓄積したときの基本は、水で塩類を移動させて外へ出すことです。ここでの用語が、LF(Leaching Fraction:溶脱率)で、「与えた水のうち鉢底から出た割合」を指します。塩類を下げるにはLFを高めるのが基本で、コンテナ培土では20〜30%程度のLFが塩類低減に有効だと整理されています(Willis, 2023)。ただし、同時に養分(特に窒素)も流れるため、やり過ぎれば“薄い培地”が出来上がる点が重要です(Willis, 2023)。

したがって運用としては、ふだんは「空気を残す水管理」を維持し、ECが上がったタイミングで意図的に溶脱を入れる方が理にかないます。🔥「肥料を増やす/水を減らす」ではなく、ECを測って、上がったら塩を出すという制御に変えると、太らせるフェーズの事故率が下がります。

🧪PHI BLEND(用土設計の一例)

ここまでの議論は、特定の用土を前提にしません。ただし実務では、「空気相を残しつつ、水と養分を回す」という要件を配合で満たす必要があります。

Soul Soil StationのPHI BLENDは、無機質75%・有機質25%という比率で、無機質に日向土・パーライト・ゼオライト、有機質にココチップ・ココピートを組み合わせています。粒度と空隙を軸に根域の酸素を確保しつつ、有機質側でWRC(貯水)を補助する設計です。🌿

PHI BLEND 製品ページ

参考文献

Argo, W. R. (1998). Root Medium Physical Properties. HortTechnology.

Chalker-Scott, L. (2000). The Myth of Drainage Material in Container Plantings. Washington State University Extension.

Colombo, R. C., et al. (2018). Substrates and irrigation levels for growing desert rose in pots. Ciência e Agrotecnologia, 42(1), 69–79.

De Boodt, M., & Verdonck, O. (1972). The physical properties of the substrates in horticulture. Acta Horticulturae.

Dumroese, R. K., et al. (2015). Irrigation methods for container nursery plants.(総説・技術資料)

LeBude, A. V., & Bilderback, T. E. (2009). The Pour-Through Extraction Procedure: A Nutrient Management Tool for Nursery Crops. North Carolina Cooperative Extension.

McBride, K. (2012). Mineral Nutrition of Adenium obesum ‘Red’. Master’s Thesis, University of Florida.

Spomer, L. A. (1975). Plant Culture in Solid Media.(書籍章)

Tjosvold, S. A. (2019). Soil Mixes Part 3: How much air and water? University of California Agriculture and Natural Resources (UC ANR).

UC ANR. (2019). Soil mixes: air and water relationships in container media. University of California Agriculture and Natural Resources.

Verhagen, J. B. G. M. (2013). Oxygen diffusion in substrates and its relation to air-filled porosity. Acta Horticulturae (ISHS).

Willis, J. (2023). Growing Media for Containers Part III: Chemical & Physical Properties. LSU AgCenter. “`

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