バーク・ココチップ・ピートの分解速度|経年劣化と目詰まり

バーク・ココチップ・ピートのイメージ画像

🧭 最初に結論をまとめると、バーク・ココチップ・ピート(ピートモスを含む有機資材)は、時間の経過とともに微生物分解粒子の軟化・微粒化が進み、鉢の中の空気孔隙率(AFP:排水後に空気として残るすき間の割合)を削りやすい資材です。AFPが削られると、表面が乾いて見えても鉢内の下層が酸素不足になり、塊根・多肉植物にとって致命的になりやすくなります(Tjosvold, 2019)。

🧪 もう一つ重要なのは、「バーク」「ココ」「ピート」という名前だけでは分解速度を決め切れないことです。素材の化学組成(リグニンやセルロース)、粒径、加工(熟成・洗浄)、温度、水分、酸素、施肥条件が揃った瞬間に、“目詰まりへ向かう速度”が一気に変わります(Bilderback et al., 2005;Carlile et al., 2015)。

📌 観点栽培で起きること
微生物分解粒子が弱くなり、微粒化が増えるほど大きい空隙が埋まり、AFPが下がりやすくなります(Bilderback et al., 2005)。
沈降・圧密分解が目立たなくても、灌水と重力で粒子が「なじみ」、細粒が隙間に入り込むことでAFPが落ち、容器容量が増えます(Jackson, 2008)。
保水性の変化細粒化や粒内保水の増加で、乾き方が鈍り、下層が過湿化しやすくなります(Bilderback et al., 2005;Carlile et al., 2015)。

🌿 なぜ「分解速度」が塊根・多肉の根に直結するのか

塊根・多肉植物が好む環境は、「いつも乾燥」ではなく、「潅水後に余剰水が速やかに抜け、その後は根が酸素を受け取れる」状態です。ここで鍵になるのが、鉢の中の空気孔隙率(AFP)と、容器容量(CC:Container Capacity、排水後に水として残る割合)のバランスです。

🌬️ UCの園芸研究では、AFPは少なくとも10%、そして一般的に25%を超えない範囲が推奨域として整理されています。さらに、排水後に水として残る割合(CC)は少なくとも40%が一つの目安になり、空気と水を合わせた全孔隙が50%以上必要になるという整理が示されています(Tjosvold, 2019)。

🪴 ここで塊根・多肉の難しさが出ます。鉢は「高さ」が限られているため、鉢底側ほど水が残りやすく、同じ用土でも鉢形状や高さで空気・水の比率が変わります。容器内では上から下へ向かって空気が減り水が増える勾配が生じることが、基礎として押さえられています(Carlile et al., 2015)。つまり、分解や沈降でAFPが削られると、まず鉢底側から酸素不足が始まりやすくなります。

🔎 したがって本稿では「分解速度」を、単なる有機物の減り方ではなく、鉢栽培で問題になる目詰まり(=空気の通り道が細粒で塞がれる現象)過湿(=排水後も水が滞留しやすい状態)へ向かう速度として扱います(Bilderback et al., 2005)。

🦠 微生物分解の正体を、鉢栽培の言葉で理解する

🔬 分解を駆動するのは「菌類・細菌の酵素」である

微生物分解は、菌類や細菌が分泌する酵素で有機物を低分子化し、最終的に二酸化炭素などへ変換する過程です。セルロース(繊維質)に対してはセルラーゼ群が、リグニン(木質の硬さを作る複雑な高分子)に対しては酸化系の酵素群が中心になりやすいことが整理されています(Baldrian & Valášková, 2008;Datta et al., 2017)。

🧬 リグニン分解は特に厄介で、菌類(いわゆる白色腐朽菌など)と細菌が、それぞれ異なる仕組みで関与します。たとえば、土壌中では菌類がセルロース分解に強く、細菌もリグニン様基質の分解に寄与し得るという知見が示されています(Wilhelm et al., 2019)。用土の中で起きているのは、こうした微生物の“役割分担”の総和です。

🌡️ 分解速度を決める三つのスイッチ

分解が速くなる条件は、鉢栽培の実務に落とすと次の三つにまとまります。

🌞 一つ目は温度で、高温期ほど微生物代謝が上がりやすくなります。二つ目は水分で、乾き切っていれば反応は進みにくい一方、常時過湿で酸素が不足すると好気的な分解は鈍ります。三つ目は酸素で、鉢内に空気の通り道が残るほど、分解も根の呼吸も起こりやすくなります。ここが「分解と根腐れが同時に進む」ように見える理由です(Bilderback et al., 2005;Tjosvold, 2019)。

🧷 もう一つ、見落とされやすいのがC/N比(炭素と窒素の比)です。木質系・繊維系の資材は一般にC/N比が大きく、微生物が増える局面では外部から窒素を引き込んでしまうことがあります。たとえばココピート(コイアピス)では、ある試料でC:N比が約105:1と報告されており、窒素が相対的に乏しい構造を示します(Rout et al., 2019)。鉢の中でこの現象が起きると、肥料が効かないのではなく、微生物側へ一時的に窒素が回っている可能性が出ます。

🧱 経年劣化で起こる「通気性低下」と「保水性変化」のメカニズム

🌀 目詰まりは「微粒化」と「なじみ(ネスティング)」で進む

有機資材は分解すると粒子が弱くなり、擦れや潅水の衝撃でも砕けやすくなります。さらに、分解が進んでいなくても、粒径の異なる粒子が混ざる鉢では、細粒が粗粒の隙間へ入り込むネスティング(粒子のなじみ)が起き、結果としてAFPが減ってCCが増える方向に動きます(Jackson, 2008)。

📉 この変化は「乾きにくくなる」だけでは終わりません。空隙のうち、根が使える“太い空気の通り道”が削られるため、同じ潅水量でも酸素供給の余力が落ちます。塊根・多肉は根を更新しながら太らせますが、その更新が止まると見た目の締まりも失われやすくなります。

📏 数字で見る:短期でも起きる沈降と物理性の変化

短期間でも物理性が動くことは、鉢用培地の研究で繰り返し示されています。たとえば温室内で14週間管理した試験では、培地の収縮(shrinkage)が、粒径が大きい木質系基材で7%、ピート主体の培地で12%、より細粒が多い木質系基材で13%という結果が報告されています(Jackson, 2008)。

💧 同じ試験では、時間経過により空気量が減り(AS低下)容器容量が増える(CC増加)方向が示され、理由としてネスティングや分解が挙げられています(Jackson, 2008)。塊根・多肉の栽培では、14週間という短さでも「鉢内環境が別物になり得る」ことを、最初から織り込むほうが安全です。

🧫 バークでも起きる:時間とともに“水持ちが増える”現象

バークは粗く使うと通気性が出ますが、バークも有機物である以上、経年で性格が変わります。コンテナ用培地の整理では、バークは当初は粒間に水を保持する性格が強い一方、加齢・分解・粒子の軟化によって粒内にも水を保持しやすくなることが述べられています(Bilderback et al., 2005)。

📊 さらに、松バークでは「新しいバーク」と「一年程度エイジングしたバーク」で、初期の物理性が大きく異なる例が示されています。エイジングしたバークは、空気量が下がる一方で容器容量と有効水が増えるという、栽培管理を変え得る差が報告されています(Bilderback et al., 2005)。同じ“バーク培地”でもロットで潅水感覚が変わるのは、気のせいではなく物理性の差として説明できます。

🪵 素材別に見る「分解しやすさ」と「目詰まりしやすさ」

🪵 バーク:分解は遅めでも、物理性は動く

バーク(樹皮)は木質系で、主成分はリグニン・セルロース・ヘミセルロースです。スコッチパイン樹皮の例ではリグニン45%セルロース25%ヘミセルロース15%という組成が報告されており、分解抵抗性の高い構造を持つことが分かります(Valentín et al., 2010)。

🧩 ただし「分解が遅い=劣化しない」にはなりません。バークは粒径・熟成・粉の割合で、空気量と水保持が大きく変わります。さらに時間とともに粒子が軟化し、空気量が減って水保持が増える方向が起こり得ます(Bilderback et al., 2005)。塊根・多肉の鉢では、この“水持ちが増えていく”変化が、根域の酸素余力を削る形で効いてきます。

🥥 ココチップ/ココピート:化学的には頑丈でも、粒径が結果を支配する

ココ資材は、チップ(粗い繊維片)とピート(細かい粉体)が混同されやすいですが、鉢内の挙動は別物になりやすい資材です。ココピートはスポンジ状で、粒径が0.5〜2mm程度のことが多いと整理され、産地・加工で物理性が大きく変動する点も指摘されています(Carlile et al., 2015)。

🧪 ココピートの化学組成はリグニンが多く、分解抵抗性を持ちやすい一方で、試料によってはリグニン31.31%が報告され、さらにC:N比が約105:1という窒素の乏しさが示されています(Rout et al., 2019)。この組み合わせは、鉢内で微生物が増える局面では窒素が一時的に微生物側へ回る可能性を示し、同時に細粒が多いほど目詰まり側へ傾きやすくなります。

🧱 実務的には「ココ=排水が良い」と決めつけないほうが安全です。ココをバークなどに混ぜると、細粒が粗粒間の大きな孔隙を埋め、空気量が下がって水保持が増える、という説明が研究でも示されています(Basiri Jahromi et al., 2020)。塊根・多肉のように根域の酸素余力が大切な植物では、ココピートの割合と粒径が“乾き方の設計”を左右します。

🧺 ピート:分解だけでなく「収縮・沈降」に注意が向く

ピート(ピートモスを含む)は微細な孔隙を多く持ち、水と空気を同時に抱えられる資材として広く使われます。物理性の整理では、ピートは粒度(分画)や分解度(腐植化の進み具合)によって空気量と有効水が大きく変わることが示されています(Carlile et al., 2015)。

📉 そしてピートは、微生物分解そのものに加えて、鉢の中での収縮(shrinkage)圧密が問題になりやすい資材です。用土が沈むと、同じ鉢でも根が置かれる層の酸素条件が変わります。塊根・多肉では、太りを狙うほど「根が強く回る期間」が長くなりやすいため、短期栽培よりもこの影響が表に出やすくなります。

🧠 ここまでの話をまとめると、バーク・ココ・ピートは「どれが良い/悪い」ではなく、経年でどちら(通気性か保水性か)へ振れやすいかを理解して配合・粒径・鉢形状・灌水を決める資材です。そこで次に焦点になるのが、分解しにくい炭素として扱われる炭系資材(竹炭・バイオ炭など)が、この“経年劣化と目詰まり”の問題をどう変え得るかという点です。

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🪨 炭系資材(竹炭・バイオ炭)は「分解速度が遅い有機材」ではなく「ほぼ不活性な多孔質骨格」として扱う

ここで扱う炭系資材は、園芸で流通する竹炭・木炭、および農学分野で議論が蓄積しているバイオ炭(biochar:酸素が乏しい条件でバイオマスを熱分解して得られる多孔質炭素材料)を含みます。バーク・ココチップ・ピートが微生物の栄養源(可給態炭素)になり得るのに対し、炭は芳香族炭素を主体とする安定な骨格を持つため、同じ「有機由来」でも、鉢内で起きることが根本的に変わります(Joseph et al., 2021; Chaturvedi et al., 2023)。

⏳ 分解と物理安定性:バーク・ココ・ピートの「微細化」と炭の「骨格維持」は別物です

バークや木質系は、鉢内での分解・摩耗・圧密によって粒径分布が細粒側へシフトし、結果として容器内の空気相(AFP)を削り、水の保持形(毛管水)へ偏らせます。実際に松樹皮系基材では、エージング(数か月)だけでも粗粒(>2mm)から細粒(<0.5mm)へ粒子が移り容器容量(CC)が約21%増え、空気相(AS)が約17%減るという報告があります(Altland et al., 2018)。

一方、炭は「分解しない=永遠に同じ」ではありませんが、園芸的に重要なのは微生物分解で急速に潰れる材料ではないという点です。鉢内での変化は、主に粉化(微粉の発生)表面の酸化・濡れ性変化として現れます。したがって炭は、バークやピートのように時間とともに一様に詰まっていくというより、最初から混入している微粉運用中に生まれる微粉をどう管理するかが焦点になります(Joseph et al., 2021)。

⚖️ pHと吸着:炭は「水はけ材」より先に「化学的な緩衝材」として効きます

炭系資材は、多孔質で表面積が大きく、表面官能基(酸素含有基など)と電荷を介して、養分や有機分子を吸着しやすい性質があります。これは肥料の急変を和らげる方向に働く一方で、条件によっては施肥直後の肥効を鈍らせることもあります(Joseph et al., 2021)。

またpHは非常に重要です。竹炭・木炭・バイオ炭は一般にアルカリ性寄りになりやすいものの、原料と製造条件で大きく変動し、バイオ炭のpHは約4.6〜9.3の幅を取り得るという整理が示されています。さらに活性炭(activated charcoal)はpH 9〜11とよりアルカリ性になりやすいとされます(Chaturvedi et al., 2023)。

塊根・多肉の用土は、目的が「大きく育てる」でも「締めて作る」でも、最終的に根圏pHと養分の可給性に帰結します。炭を追加する場合は、排水性の議論だけでなく、pHが上がり過ぎないか、また吸着で栄養設計が狂わないかを、少なくとも「加える前より難しくなる」前提で考える必要があります(Raviv & Lieth, 2008; Joseph et al., 2021)。

🧬 微生物生態:炭は「殺菌」ではなく「住処」と「反応場」を増やします

炭はしばしば「清潔そう」「病気が減りそう」と語られますが、科学的に見ると本質は逆で、炭の多孔質構造と表面は微生物の生息場所(ハビタット)になり得ます。実際、バイオ炭施用で根面(リゾプレーン)を含む根圏の細菌群集が変化した研究があり、バイオ炭区で根関連細菌の構造が明確に分かれたことが示されています(Kolton et al., 2011)。

この「住処」が良い方向に働くと、根圏での養分循環ストレス耐性が上がる可能性があります。一方で、これは「必ず良くなる」ではなく、炭の性状(微粉量、pH、灰分、表面特性)と、鉢内環境(温度・水分・施肥)で結果が揺れる領域です(Joseph et al., 2021)。

🌿 菌根との関係:炭は「根の相棒」を増やす可能性がありますが、条件依存です

多肉・塊根の多くは、野外では土壌微生物(菌根菌を含む)と相互作用しながら根を維持します。炭系資材が菌根に与える影響は一枚岩ではありませんが、少なくとも「炭は菌根に対して常に悪い」という理解は支持されにくいです。

たとえば柑橘を用いた研究では、土壌への炭施用で根の伸長が促進し、さらにVA菌根(VAM)の感染強度が高まったことが報告されています(Ishii & Kadoya, 1994)。園芸の鉢内は野外土壌とは違いますが、炭が「無菌」ではなく根圏を組み替える材料である、という理解は実務に直結します。

🧤 「根に炭が絡む」は本当か:見た目問題は“粒径”と“微粉”で説明できます

ご指摘の「炭は根に粒子が絡んで避けたい」という話は、科学的には粒径と表面現象で整理すると理解しやすくなります。

まず、炭は多孔質で表面が粗く、さらに根は粘性のある分泌物(粘質物や有機酸など)を根圏へ放出します。この組み合わせは、炭の微粒子が根毛や根面に付着しやすい条件を作ります。特に炭の微粉(チャコールダスト)が混じると、根が黒く見えたり、洗っても落ちにくかったりして、「絡む」という印象が強くなります(Joseph et al., 2021)。

一方で、粒径が十分に大きい炭(例えば数mm〜)は、根の周りで骨格として残るだけになりやすく、見た目上の問題は出にくくなります。したがって、炭を使うなら、発想としては「炭を混ぜる」より前に、微粉を持ち込まない(あるいは事前に除く)ことが重要になります。ここはバークやピートの微細化と同じく、微粉が増えるとAFPを削り、目詰まりへ寄与するため、見た目だけでなく機能面でも一貫しています(Tjosvold, 2019; Altland et al., 2018)。

🧮 目詰まりを「運」から「設計」に変える:粒径分布・鉢形状・環境のセットで考える

バーク・ココ・ピート・炭のどれを選んでも、鉢の中では粒子の再配置(圧密)微細粒の移動が起こり、物理性は時間とともに変化します。ここで重要なのは、「目詰まりするか/しないか」ではなく、目詰まりが致命的になる前に、根に必要なガス交換と水の更新が成立しているかです。

コンテナ培地の整理として、空気相(AFP)は少なくとも10%(概ね25%以下)、また容器容量(CC)は少なくとも40%、したがって全孔隙(TP)は50%以上が推奨される、という考え方が広く共有されています(de Boodt & Verdonck, 1972; Tjosvold, 2019)。塊根・多肉を「綺麗に大きく」育てたい場合、この範囲は“安全域”として非常に扱いやすい指標になります。

📏 同じ配合でも鉢で結果が変わる理由:滞水域と乾湿サイクルの非対称性です

鉢では重力排水が終わっても、下部に滞水域(鉢底付近に残る水の層)が生じます。これは「排水穴があるのに濡れている」状態を作り、根の呼吸(酸素供給)を最も圧迫します(Hillel, 1998)。

ここに微細粒が増えると、滞水域が厚くなり、かつ水の移動(透水性)が落ち、結果として鉢の下半分が“長く濡れ、上半分が“先に乾く”という非対称が強まります。塊根・多肉で根傷みが起きやすいのは、しばしばこの構造が背景にあります。

🧩 「微細粒は悪」ではありません:微細粒は“機能”ですが、“増え過ぎ”が問題です

ピートやココピートのような微細有機は、単なる“詰まり要因”ではなく、適正量なら保水・保肥・根の接触面を増やす役割を担います。ココダスト(ココピート)は、粒径分布によって空気と水のバランスが大きく変わり、粒子が粗いほど空気が増え、水保持が下がることが示されています(Abad et al., 2005)。

つまり、問題は「微細粒が存在すること」ではなく、経年で微細粒が増え、設計したAFPとCCのバランスが崩れることです。微細粒をゼロにする方向へ走ると、今度は水と肥料のクッションが消え、根が細く展開しにくい、あるいは灌水設計が極端になる、といった別の歪みが出ます(Raviv & Lieth, 2008)。

📊 4資材を「経年変化の起点」で並べると、管理ポイントが見えます

資材経年で起きやすい変化の起点鉢運用での主要リスク
バーク分解+圧密で細粒化が進みやすい(数か月スケールでも物理性が動く)AFP低下→鉢下部の酸素不足、乾きムラの増大(Altland et al., 2018)
ココチップ/ココピート材料自体は比較的安定だが、微粉分の持ち込みと移動で物理性が振れやすい微粉が多いと表面シール・排水悪化。ただし粒径設計が合えば有効(Abad et al., 2002; Abad et al., 2005)
ピート湿乾の繰り返しで収縮・再湿潤性低下が起こりやすい乾くと撥水→急な灌水で局所飽和、濡れると圧密→AFP低下(Raviv & Lieth, 2008)
炭(竹炭・バイオ炭)骨格は残りやすいが、微粉の混入と粉化、表面性状の変化が支配的微粉が根面付着(見た目)+目詰まり寄与。pH/吸着で栄養設計が変わる(Joseph et al., 2021; Chaturvedi et al., 2023)

🪴 塊根・多肉全般での「属ごとのズレ」を、根の生理で捉える

塊根・多肉と一括りにしても、根が求めるものは同一ではありません。ただし、属の違いを「好み」で語ると経験談になりがちなので、ここでは根のガス交換・水の更新・根圏微生物の3点で整理します。

🌵 アガベ:根を太らせるより「酸素の取り込み」を最優先にしやすい

アガベは乾燥適応が強く、鉢栽培では“濡れている時間の長さ”が根のトラブルに直結しやすいグループです。したがって、バークやピートの比率を上げて保水を稼ぐより、AFPを削らない粒径設計を優先し、微細化が進む配合は早めに見直すほうが理にかないます(Tjosvold, 2019)。炭を使う場合も、排水目的というより、微粉を抑えた上で根圏の緩衝材としての意味合いに寄せた方が破綻しにくいです(Joseph et al., 2021)。

🌱 パキポディウム:成長期の吸水量が大きいほど、微細有機の“質”が効きます

パキポディウムは成長期の吸水と同化が大きく、鉢内が乾き過ぎると根の更新が鈍りやすくなります。ここでは微細有機を完全に排除するのではなく、微細粒を“制御して残す”考え方が有効です。ココダストは、物理性が粒径分布に強く依存し、空気と水のバランスを調整しやすいことが示されています(Abad et al., 2005)。一方で、バークは数か月でも細粒化が進み得るため、同じ「有機25%」でも、長期安定性は異なります(Altland et al., 2018)。

🌿 ユーフォルビア:根の“更新速度”が落ちた時に詰まりが表面化しやすい

ユーフォルビアは種・系統の幅が大きいものの、総じて言えば、根傷みが起きた後の回復局面で酸素不足が長引くと再生が遅れやすく、そこで初めて「土が悪い」が顕在化します。つまり、配合の差というより、経年でAFPが落ちた時に“耐えられるかどうか”が分岐になりやすいです(Tjosvold, 2019)。炭の追加は、根圏微生物を組み替え得るため魅力がありますが、pHと吸着の影響が読みにくいので、採用するなら微粉を抑えた少量からの評価が現実的です(Kolton et al., 2011; Joseph et al., 2021)。

🔧 実務:経年劣化と目詰まりを「早めに検知して小さく直す」

目詰まりは、起きてから対処すると「植え替え以外に選択肢がない」状態になりがちです。逆に、物理性のズレを小さいうちに検知できれば、対処はかなり軽くできます。

🕵️ 鉢の中で“物理性がズレた”時に出やすいサイン

代表例として、灌水直後に表面で水が弾かれて流れる(撥水)、あるいは水が入っても鉢底からの排水が極端に遅いといった現象があります。前者は乾燥後の再湿潤性低下(特にピートで起こりやすい)として、後者はAFP低下と透水性低下の組み合わせとして説明できます(Raviv & Lieth, 2008)。

また、鉢の重量変化が「乾いたつもりでも重い」状態で頭打ちになるときは、鉢下部に滞水域が厚く残っている可能性があります。これは根の呼吸を圧迫し、結果として根の更新が落ち、さらに微細化が進む、という悪循環の入口になります(Hillel, 1998; Tjosvold, 2019)。

🧰 対処は3段階で考えると失敗が減ります

第一段階は、微粉をこれ以上“作らない/動かさない”方向の運用です。具体的には、過湿を避けて乾湿サイクルを整え、鉢内での圧密を増やしにくい灌水を意識します。第二段階は、表層〜中層の物理性の再設計で、表面に新しい粗粒層を作って通気を回復させる、あるいは上部だけ更新して水の入り方を改善します。第三段階が、鉢内全体の更新(植え替え)です。

ここで重要なのは、バークのように数か月でも物理性が動き得る材料がある以上(Altland et al., 2018)、リセットのタイミングは「年数」より、AFPとCCのバランスがまだ成立しているかで判断する方が合理的だという点です(de Boodt & Verdonck, 1972; Tjosvold, 2019)。

🌱 まとめ:有機材は「効かせる」ほど、経年変化を前提に“更新設計”が必要になります

バーク・ココチップ・ピートは、いずれも根にとって有益な側面を持ちますが、鉢という閉鎖系では、微生物分解と物理再配置によって粒径分布が必ず変わり、それがAFPとCCのバランスを崩すことで目詰まりが現れます(Raviv & Lieth, 2008; Altland et al., 2018)。

炭系資材は、分解という意味では安定ですが、微粉の混入と粉化、さらにpHと吸着という“化学的な作用”が効くため、単純な排水材として扱うと読み違えやすい材料です(Joseph et al., 2021; Chaturvedi et al., 2023)。

塊根・多肉を綺麗に大きく育てるには、根圏の酸素と水の更新が成立していることが前提になります。そのための基準として、AFP 10〜25%CC 40%以上TP 50%以上という整理は、栽培の意思決定をかなりクリアにしてくれます(de Boodt & Verdonck, 1972; Tjosvold, 2019)。

🧪 配合を毎回再現しにくい場合の選択肢

有機材の「効かせ方」と「経年変化」の両方を毎回同じ精度で設計するのが難しい場合は、最初から狙う物理性が出るように配合された用土を選ぶのも現実的です。PHI BLENDは、無機質75%・有機質25%の設計で、無機質に日向土・パーライト・ゼオライト、有機質にココチップ・ココピートを用いる構成です。ココ資材は粒径設計によって空気と水のバランスが大きく変わることが示されており(Abad et al., 2005)、配合設計の“再現性”を確保したい場面で扱いやすい選択肢になります。

参考文献

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