川砂の粒径と排水性の科学的分析

目次

川砂の粒径と排水性の科学的分析――鉢植えの塊根植物・多肉植物に「ちょうどよい土」をつくる

🌿「砂を混ぜれば水はけが良くなる」。園芸ではよく聞く考え方ですが、鉢の中では地面とは違う現象が起きます。水はけを良くしすぎると、今度は根がつかむ水も空気も減ってしまい、かえって調子を落とすことがあります(Hillel, 1998)。本稿では、川砂の粒径(粒の大きさ)と粒度分布(大小の混ざり具合)、そして粒の形が、鉢の中の「水・空気・温度・養分」のバランスにどう影響するかを丁寧にほどいていきます。次の章から順に仕組みを見ていきましょう。

1. 用土を見るときの「ものさし」

📏まずは以後の話で出てくる基礎用語を、実際の手触りと結びつけて押さえます。

AFP(空気相率)=水やり直後に鉢の中で空気が通える隙間の割合。数字が大きいほど「息がしやすい土」です。鉢の培養土では15〜25%程度が心地よい目安とされます(Handreck & Black, 2002; Caron et al., 1992)。

飽和透水係数(Ksat)=水がどれだけスムーズに抜けるかの目安。砂や礫は大きく、粘土は小さくなります(Hillel, 1998)。

pF(ピーエフ)=土が水を引きつける強さの尺度。pF1.5あたりが「水やり後に余分な水が抜けた直後」の状態の目安です(van Genuchten, 1980; Bunt, 1988)。

土の中の酸素の回り具合(ODR)については、難しい単位は覚えなくて大丈夫です。「水やりのあと、鉢がいつまでも重く冷たい・指を入れるとぬかるむ」ようなら、根が息苦しくなっている合図だと考えてください(Letey, 1961)。

2. 川砂の「粒の大きさ」が左右すること――水はけだけでなく、空気と水持ちも

💧粒が大きくなるほど水はけは一気に良くなります。古典的な経験則では、役者は有効粒径(D10)で、これが大きくなると水の抜けやすさ(Ksat)はおおよそ二乗の勢いで増える、と整理されてきました(Hazen, 1893; Kozeny, 1927; Carman, 1937)。つまり、粒が3倍なら水抜けは約9倍の違いが出ても不思議ではありません。ただし、鉢の中では「水が抜ける」だけでなく、そのあとにどれだけ空気が通い、どれだけ水を残せるかが同じくらい大切です(Caron et al., 1992)。

ここで粒度分布(Cu)が効いてきます。2〜4 mmの中粒だけの「整った砂」なら間の隙間が広く水はスッと抜けます。ところが、0.1〜0.2 mmより細かい粉がほんの数%混じるだけで、その隙間を目詰まりさせ、KsatもAFPも一緒に落ちることがよくあります(Hillel, 1998)。砂を使うなら、ふるいと水洗いで粉をよく払うことが第一歩です。

3. 粒の「形」まで気にすると、通気の筋道が見えてくる

🪨川砂は丸みがあり、きれいに詰まりやすい素材です。丸い粒ほどぴたりと寄り添って空隙が少なくなり、空気の通り道の筋も限られます。一方、日向土や軽石のような角ばった多孔質の粒は、わずかに橋のように組み上がってすき間を作り、空気と水の道がたくさん生まれやすい性質があります(Caron et al., 1992)。同じ「空気の量」でも、つながった道が多いか少ないかで、根が感じる息苦しさは大きく変わります。丸砂は息が「詰まりやすく」、火山礫は「ぬけやすい」。この違いを頭に置いておくと、のちの配合判断が楽になります。

4. 鉢の中で起きていること――仮想水位と層の境目のトラップ

📦鉢は底に穴があっても、底部に薄い水の層が残ります。これが仮想水位です。細かい粒ほど毛細管の力が強く、この水の層は「厚く」なります。粗い粒ほど薄くなります(Hillel, 1998)。また、細かい土の下に粗い砂や鉢底石を敷くと、境目で水が引っかかり、上の層に水が乗ってしまうことがあります。直感に反して、鉢底石がいつも水はけを良くするとは限りません(Hsieh & Gardner, 1959; Chalker‑Scott, 2013)。

対策はシンプルです。砂は層にせず全体にきれいに混ぜる。鉢は深めを選び、根の住むところに空気の道が自然に通るよう粉を抜く。この二つが基本になります。

5. 川砂・日向土・軽石・鹿沼土・パーライト・ゼオライトをくらべる

📊「水の抜け」と「息のしやすさ」と「水持ち」。三つのバランスを見るための比較表です。製品やふるい方で変わるため、範囲で捉えてください。

資材代表D50 (mm)嵩密度 (g/cm³)AFP(%)水の抜けやすさ水持ち(pF1.5,%)保肥力(CEC)耐久ポイント・参考
川砂(2–4 mm)2–41.4–1.610–15とても速い5–10ほぼ0丸く詰まりやすい。水も空気も「保持」は少なめ(Handreck & Black, 2002)。
川砂(6–8 mm)6–81.5前後5–10極めて速い3–5ほぼ0層として敷くと上で滞水しやすい(Chalker‑Scott, 2013)。
日向土(4–6 mm)4–60.8–0.920–25ほどよい15–20低〜中角ばった多孔質。通気と水持ちの同居が得意(Handreck & Black, 2002)。
軽石6–130.6–0.8〜20ほどよい10–20粒内孔でゆっくり乾く(Bunt, 1988)。
鹿沼土5–70.4–0.625–30やや遅い20–25低〜中酸性寄り。微塵化に注意(Bunt, 1988)。
パーライト2–50.1–0.230–40遅い20–30ほぼ0超軽量で空隙を増やすが、浮きやすい(Handreck & Black, 2002)。
ゼオライト1–30.9–1.115–20ほどよい15–20とても高い少量で保肥力を底上げ(Mumpton, 1999)。

一言でまとめると、川砂は「抜け」は最強ですが、「残し」と「息」は控えめ。日向土や軽石のような火山礫は、抜け・息・残しの同居が得意です(Caron et al., 1992)。

6. 粒径別の川砂の扱い方――2–4 mmと6–8 mmでは役割が違う

6-1. 2–4 mm(園芸用の標準帯)

🔍水やり直後の重だるさが抜けるのは早く、過湿を避けやすい帯です。ただし乾きも速いため、真夏の屋外では「朝夕の刻み給水」や「曇天時だけ腰水を短時間」など、水の入れ方の工夫が欠かせません(Handreck & Black, 2002)。

6-2. 6–8 mm(砂利に近い帯)

💨抜けは痛快ですが、層にすると上で滞水しやすくなります。全層にまんべんなく混ぜる前提で使います。根が触れる面積が減るため、幼苗や細根タイプでは活着が遅れがちです(Bunt, 1988; Chalker‑Scott, 2013)。

6-3. 「粉」の管理は最重要

⚠️0.1〜0.2 mm以下の粉が数%混ざるだけで、水の道と空気の道が同時にやせることがあります。ふるい(2 mmと1 mm)と水洗いで、袋の底に溜まった粉をしっかり抜いてから使いましょう(Hillel, 1998)。

7. 代表的な属ごとの作り分け――アガベ/パキポディウム/ユーフォルビア

🌱同じ多肉でも根の形や呼吸の仕方が違います。ここでは「大枠の考え方」を示します。現場では鉢・置き場所・天候で微調整してください。

7-1. アガベ(Agave)

🗻浅広い根で空気を好みます。日向土(4–6 mm)を5〜6割の骨格に、パーライトを1〜2割で空隙を増やし、ゼオライト1割で保肥力を足し、残りをココチップ・ココピートなど2〜3割の「やさしい水持ち」で補います。砂を使うなら2–4 mmを1割前後まで。夏の長雨期だけ一時的に砂を増やすのは理にかないます(Handreck & Black, 2002; Mumpton, 1999)。

7-2. パキポディウム(Pachypodium)

🌤️塊根の外側は丈夫でも、細根の息苦しさは苦手です。「腹八分目の水分」が鍵。日向土4〜5割+軽石2割+ゼオライト1割+有機2〜3割を一つの起点にします。砂は基本なし、入れても5〜10%まで。自由排水後に手でほぐすと、ひんやりはするが指に泥はつかないくらいがちょうどよい感触です(Caron et al., 1992; Bunt, 1988)。

7-3. ユーフォルビア(Euphorbia)

🌬️背が出やすい種では鉢の安定感も大切です。日向土主体で組み、重心を下げたいときだけ砂やゼオライトをほんの少し足します。砂は上限1割まで。乾きすぎたら、ココチップを少し増やして緩衝をつくると安定します(Handreck & Black, 2002)。

8. 微生物と病原の視点――「乾かす」は消毒ではなく、呼吸の時間をつくる行為

🧫根は息をしています。いつまでも重く冷たい状態が続くと、根の働きが落ち、やがて水カビの仲間(PythiumPhytophthora)が勢いづいて根腐れに向かいます(Agrios, 2005)。砂主体は乾きが速く清潔に保ちやすい面がありますが、水やり直後は空気の道が少ないため、息苦しさが一時的に出やすいこともあります。日向土や軽石のような多孔質粒は、粒の外と中に小さな空気の居場所をいくつも持ち、水やり直後のガス交換を助けます(Caron et al., 1992)。

また、砂や軽石主体は保肥力(CEC)が小さいため、液肥の当たり外れが大きくなりがちです。少量のゼオライトを混ぜると、アンモニウムやカリウムをいったん抱えてゆっくり放す働きが期待できます(Mumpton, 1999)。肥料焼けや塩白華が出たら、たっぷりの水で鉢底から1/4〜1/3が流れ出るくらい洗い流してリセットするのが近道です(Bunt, 1988)。

9. 仕上がりを左右する実務のコツ――ふるい・充填・鉢・再利用・簡易チェック

🛠️ふるい分けは最重要です。2 mmと1 mmの二段で粉を抜き、必要に応じて水洗いで濁りが出なくなるまで揺すります(Hillel, 1998)。充填は押し込まず、鉢を軽くトントンして自然に落ち着かせます。強く押すと微小な空隙が潰れて息苦しい土になります(Caron et al., 1992)。

鉢のは深めが有利です。浅鉢は仮想水位の割合が高くなり、過湿に振れやすくなります。素焼き鉢は側面からも水が抜けるので乾かしやすい反面、白華(塩の析出)が起きやすいので、たまのリセット潅水を忘れずに(Bunt, 1988)。

再利用では、日向土・軽石・砂は形を保ちやすく、鹿沼土・赤玉土は崩れやすい性質があります。ふるいで細かくなった分だけ除き、粉が多ければ新しい骨材で厚みを戻します。ECメーターがなくても、浸水後の水がねっとり・しょっぱいと感じたら交換を検討します(Bunt, 1988)。

簡易チェックの指標も持っておくと便利です。水やり直後、鉢底からの滴りが1〜2分で止まるなら排水は良好。翌日の土を指でほじって、冷たくぬかるむ→過湿しっとりで指に土がほとんど付かない→ちょうどよいカサカサで指も白くなる→乾かしすぎ、といった感触で整えていきます(浅野ほか, 2017)。

10. PHI BLENDが日向土を主材にし、川砂を採用しない理由

🔧PHI BLENDは無機質75%・有機質25%の設計で、無機に日向土・パーライト・ゼオライト、有機にココチップ・ココピートを使います。狙いは「抜け・息・残し」の同居です。主材の日向土は角ばった多孔質粒で、通気の道ゆるやかな水持ちを同時に用意できます。パーライトは空隙を増やし、ゼオライトは保肥力の弱さを底上げします(Caron et al., 1992; Handreck & Black, 2002; Mumpton, 1999)。

川砂は抜けは抜群ですが、丸く詰まりやすく、「空気も水も保持しにくい」極端さが出やすい素材でもあります。通年で管理を安定させ、根がじっくり張る時間を確保するという観点では、日向土主体が扱いやすい結論になります(Hillel, 1998; Caron et al., 1992)。

製品の詳細は、PHI BLEND 製品ページをご覧ください。

参考文献

  • Agrios, G. N. (2005). Plant Pathology (5th ed.). Elsevier.
  • Bunt, A. C. (1988). Media and Mixes for Container-Grown Plants (2nd ed.). Unwin Hyman.
  • Caron, J., Elrick, D., & Beeson, R. (1992). Aeration in growing media: recent developments. Acta Horticulturae, 342, 40–50.
  • Chalker‑Scott, L. (2013). Container planting: intuition vs. reality. The Garden Professors.
  • Carman, P. C. (1937). Fluid flow through granular beds. Transactions of the Institution of Chemical Engineers, 15, 150–166.
  • Handreck, K. A., & Black, N. D. (2002). Growing Media for Ornamental Plants and Turf. UNSW Press.
  • Hazen, A. (1893). Some physical properties of sands and gravels. 16th Annual Report, Massachusetts State Board of Health.
  • Hillel, D. (1998). Environmental Soil Physics. Academic Press.
  • Hsieh, J. C., & Gardner, W. (1959). Unsaturated flow in soil. Soil Science Society of America Journal, 23, 305–311.
  • Kozeny, J. (1927). Ueber kapillare Leitung des Wassers im Boden. Sitzungsberichte der Akademie der Wissenschaften.
  • Letey, J. (1961). Aeration, compaction and drainage. HortScience, 76(2), 132–133.
  • Mumpton, F. A. (1999). La roca magica: Uses of natural zeolites in agriculture and industry. Proceedings of the National Academy of Sciences, 96, 3463–3470.
  • van Genuchten, M. T. (1980). A closed-form equation for predicting the hydraulic conductivity of unsaturated soils. Soil Science Society of America Journal, 44, 892–898.
  • 浅野 陽樹・池田 充・ほか (2017). 土壌物理性の簡易評価法および排水性の異なる培土の調製法の開発. 日本産業技術教育学会誌, 59(3), 229–235.
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